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地域包括ケアって何だろう ~疑問に答えられますか?~

わかっているようで、よくわからない地域包括ケアシステム・・・・

「何が変わるのか」「誰がやるのか」「なぜ今なのか」・・・・


 

これからの高齢者介護・医療を語るうえで、不可欠なキーワードが「地域包括ケア」です。
テレビや新聞、雑誌などのメディアでも取り上げられることが多くなり、一般的な用語としての認知度も高くなっています。介護や看護、福祉、医療、保健など、この業界に携わる人であれば、「初めて聞いた」という人はいないでしょう。要介護高齢者の激増、家族介護の限界、介護人材不足、介護医療費用の増大など少子高齢化に伴う様々な課題が表面化する中、政府は「地域包括ケアの推進によって・・」と、その対策の方針としてこの言葉を掲げています。

あなたは「地域包括ケアとは何か」と聞かれたときに、きちんと説明することができるでしょうか。

 

~ところで、地域包括ケアって何でしょう~

厚生労働省は以下のように説明しています。

重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進する

ある介護の管理者向けのセミナーで、「地域包括ケアとは何でしょう?」と質問した時にも、
『重度要介護になっても、住み慣れた地域で生活できるように体制を整えること』
『医療、介護、看護、福祉、施設、住宅など事業者、業態を超えた連携が重要だ』
と、参加者からは、その指針に沿った模範的な回答が寄せられました。
もちろん、それは間違いではありません。
ただ、不思議に思うのは、「これまでと何が違うのか? 何が変わったのか?」ということです。

介護保険制度によって、導入されたのが「ケアマネジメント」の概念です。
それは、「要介護状態になっても、それぞれ個別の生活環境・ニーズに合わせて安全、快適に生活できるよう、様々な社会資源を活用し、要介護高齢者の生活を支える」というものです。言葉は違いますが、この介護保険制度の理念のイメージとほぼ同じですし、今までもやっていたことです。
地域包括ケアの中には、「医療を含めてより有機的な緊密な連携方法を推進しましょう」「地域で連携のケア会議を行いましょう」という新しい方針や手法も含まれています。しかし、「地域包括ケアは高齢者政策の大転換」「地域包括ケアがこれからの高齢者の医療・介護を変える」と言われると、それほど大仰なものだとは思えません。

 

~地域包括ケアへの3つの疑問~

疑問は、大きく分けると3つです。
一つは、「実務的に何が、どう変わるのか?」です。
地域包括ケアシステム構築の独自の手法として、スタートしたのが「地域ケア会議」です。
これは、地域包括支援センター等が中心となって主催するもので、「困難ケースの検討、連携強化」「ケアマネジメント力の実践力の向上」「地域課題の明確化」などが役割、機能として挙げられています。
この地域ケア会議は、地域の多職種連携の強化、地域課題の発見などボトムアップとしては有効な手段ですが、「地域包括ケアシステムの構築=地域ケア会議の実施」と言われれば、言葉のイメージとしてはかけ離れています。今のところ、ケース会議やケアマネジメントのスーパービジョンとほとんど変わらない、という人もいます。

二つ目は「誰が主体なのか?」「誰が地域包括ケアシステムを作るのか?」です。
地域包括ケアのセミナーでは「これからは地域が主体となって・・」「地域を中心に・・」と繰り返し語られます。イメージする言葉としては良いのですが、実践となると話がぼやけてしまいます。
「業界の枠、業種の垣根を超えて綿密に連携する」と言葉にするのは簡単ですが、介護サービス事業者はそれぞれ民間事業者です。同一エリアでサービスを行う他の事業者は、協力業者、連携事業者である一方で、商売敵、ライバルでもあります。

厚労省の資料で、「地域包括ケアシステムの姿」として、上記のようなイメージ図が作成されていますが、地域ごとに限られた一部の事業者、法人内の連携であれば、問題となっている高齢者住宅の「囲い込み」とあまり変わりません。「連携という名のもとに、地域の要介護高齢者を囲い込み」では、事業者からの、不必要な医療や介護の押し売りによって、より社会保障費の増大を招くことになります。

最後の一つは、「なぜ、今、国はこんなことを言い始めたのか?」です。
日本の行政機構は、アメリカなど州政府に分かれているのと違い、国の政府にその政策力が集中する「中央集権システム」です。国が頭(ブレイン)となって政策・計画・補助金を決定し、都道府県や市町村は、それを手足となって実行するという役割分担です。この中央集権が良いか悪いかは別にして、特に社会保障の分野では、自治体によって政策マネジメントの優劣がなくなり、ある程度、全国どこでも同じレベルの行政サービスが受けられるということは事実です。

しかし、地域包括ケアシステムは、厚労省が中心になって「これからは国ではなく、地域が中心となって医療や介護などの高齢者施策を推進する」と懸命にアピールしています。ただ、大阪の維新の会を見てもわかるように、自治体への権限や財源の移譲を求めるのは、これまで都道府県など自治体側であり、国や中央省庁は自らの権益を守りたい、維持し続けたいというのが、通常の構図です。なぜ、高齢者の介護や医療の分野では、逆のことが起きているのか不思議です。

言いかえれば、この三つの疑問、「何が変わるのか」「誰がやるのか」「なぜ今なのか」を考えると、「地域包括ケアシステム」というものが、社会保障政策にとって、どれほど大きな転換なのか、表面的な耳当たりの良い言葉の裏にある、その実体と方向性が見えてくるのです。

 

 

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